墓じまいの行政手続きは「改葬許可」の一本道
墓じまいに必要な行政手続きは、突き詰めると「改葬許可証を取得して、お墓の管理者に提出する」という一つの流れに集約されます。
改葬とは、埋葬された遺骨を別の場所に移すことを指します。日本では「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)の第5条により、遺骨を移す際には市区町村長の許可が必要と定められています(出典 e-Gov法令検索 墓地、埋葬等に関する法律)。
つまり、墓じまいの手続きとは、この改葬許可を得るための書類を準備し、役所に申請することです。手続き自体はそれほど複雑ではなく、書類さえ揃えれば窓口に提出するだけで完了します。
全体の流れを整理すると、以下のようになります。
- 新しい供養先を決め、「受入証明書」を発行してもらう
- 現在のお墓の管理者(お寺・霊園)から「埋葬証明書」を発行してもらう
- 「改葬許可申請書」に記入し、上記2つの書類とともに役所へ提出する
- 役所から「改葬許可証」が交付される
- 改葬許可証を新しい供養先に提出し、遺骨を納める
この流れを一つずつ進めていけば、特に迷うことはありません。それぞれの書類の取得方法について、詳しく見ていきます。
改葬許可証は「現在のお墓がある市区町村」で取得する
改葬許可証の申請先は、現在のお墓が所在する市区町村の役所です。自分が住んでいる自治体ではない点に注意してください。たとえば、ご自身は東京にお住まいで、お墓が静岡県にある場合は、静岡県の該当する市区町村に申請します。
窓口は自治体によって異なりますが、「市民課」「戸籍課」「生活環境課」などが担当しているケースが多いです。事前に電話で確認しておくと、当日スムーズに手続きを進められます。
申請に必要な書類一覧
改葬許可を申請する際に必要な書類は、一般的に以下の通りです。自治体によって多少の違いはありますが、大きくは変わりません。
| 書類名 | 発行元 | 備考 |
|---|---|---|
| 改葬許可申請書 | 役所(様式を入手) | 遺骨1柱につき1枚が基本 |
| 埋葬証明書 | 現在のお墓の管理者 | お寺・霊園が発行 |
| 受入証明書 | 新しい供養先 | 永代供養墓・納骨堂など |
| 申請者の本人確認書類 | ご自身で用意 | 運転免許証・マイナンバーカード等 |
自治体によっては、申請書の中に埋葬証明の欄が設けられていて、お寺や霊園の署名・捺印をもらえばそれが埋葬証明書を兼ねる形式を採用しているところもあります。まずは役所のホームページで様式を確認するか、電話で問い合わせるのが確実です。
改葬許可申請書の記入は難しくない
改葬許可申請書の様式は自治体ごとに異なりますが、記入する内容はほぼ共通しています。氏名や住所といった基本情報に加えて、遺骨に関する情報を記載するだけです。
主な記入項目を整理します。
申請者に関する項目
申請者の氏名・住所・連絡先を記入します。申請者は原則として、お墓の使用権者(承継者・名義人)です。名義人以外が申請する場合は、委任状が必要になる自治体もあります。
故人に関する項目
改葬する遺骨の故人について記入します。氏名、死亡年月日、埋葬年月日、現在の墓地の名称と所在地が主な項目です。複数の遺骨を改葬する場合は、1柱ごとに1枚の申請書が必要となる自治体が多いです。
古いお墓の場合、故人の死亡年月日や埋葬年月日が分からないこともあります。その場合は「不詳」と記入して問題ありません。役所の窓口で相談すれば、対応方法を教えてもらえます。
改葬先に関する項目
遺骨の移転先となる墓地・納骨堂の名称と所在地を記入します。この情報は受入証明書に記載されている内容をそのまま転記すれば大丈夫です。
散骨を予定している場合は、自治体によって取り扱いが異なります。散骨は法律上「改葬」に該当しないと解釈されるケースもあるため、事前に役所に確認しておくことをおすすめします。
埋葬証明書と受入証明書は早めに動いておく
改葬許可を申請するには、「埋葬証明書」と「受入証明書」の2つを事前に取得しておく必要があります。この2つの書類は自分で取り寄せるものではなく、それぞれの管理者に依頼して発行してもらうものです。
埋葬証明書は現在のお墓の管理者から
埋葬証明書は、「この墓地にこの方の遺骨が埋葬されています」という事実を証明する書類です。お寺の墓地であれば住職に、公営霊園であれば管理事務所に依頼して発行してもらいます。
発行に費用がかかることは少なく、無料〜数百円程度です。ただし、お寺の場合は墓じまいの話を切り出すきっかけにもなりますので、丁寧にお話しすることが大切です。墓じまいの意向を伝えるタイミングと合わせて依頼するのがよいでしょう。
受入証明書は新しい供養先から
受入証明書は、「この施設で遺骨を受け入れます」という証明書です。永代供養墓、樹木葬、納骨堂など、新しい供養先が決まったら、その施設に依頼して発行してもらいます。
受入証明書を取得するためには、当然ながら新しい供養先を先に決めておく必要があります。墓じまいの手続きを始める前に、まず供養先の見学や契約を済ませておくと、全体の流れがスムーズに進みます。
なお、自治体によっては受入証明書が不要なところもあります。申請前に必ず確認しておきましょう。
手続きの期間は2〜4週間、費用は数百円程度
行政手続きそのものにかかる期間は、書類が揃っていれば即日〜1週間程度です。改葬許可証はその場で発行してもらえる自治体も少なくありません。
ただし、実際には書類を揃えるまでに時間がかかります。お寺に埋葬証明書を依頼し、新しい供養先から受入証明書をもらい、申請書を記入する。これらを並行して進めても、全体で2〜4週間は見ておくのが現実的です。
遠方のお墓で郵送でのやり取りが発生する場合や、お寺との話し合いに時間がかかる場合は、さらに余裕をもったスケジュールを組んでおくと安心です。
行政手続きにかかる費用の目安
| 費用項目 | 金額目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 改葬許可証の発行手数料 | 無料〜数百円 | 自治体により異なる |
| 埋葬証明書の発行費用 | 無料〜数百円 | お寺・霊園により異なる |
| 郵送費用(遠方の場合) | 数百円程度 | 往復分の切手代 |
行政手続きそのものの費用は、合計しても1,000〜2,000円程度に収まります。墓じまい全体の費用(30〜50万円)と比べれば、ほぼ気にしなくてよい金額です。手続きにお金がかかるのではないかと心配されている方も多いですが、この点は安心していただいて大丈夫です。
手続きを代行してもらうという選択肢もある
改葬許可の手続きは個人でも十分にこなせますが、「時間がない」「遠方で動きにくい」「書類の準備が不安」という方には、専門家や業者に代行を依頼する方法もあります。
行政書士への依頼
改葬許可申請は行政手続きであるため、行政書士に代行を依頼できます。費用は3〜5万円程度が相場です。書類の作成から役所への提出まで、手続き全般を任せることができます。
特に、複数の遺骨を改葬する場合や、古いお墓で故人の情報が不明な場合は、行政書士に相談するとスムーズです。
墓じまい専門業者への依頼
墓じまいの専門業者は、行政手続きだけでなく、お寺との交渉、墓石の撤去、新しい供養先の手配まで一括で対応してくれます。手続きだけを切り出して依頼するというよりは、墓じまい全体をまるごとお願いする形が一般的です。
費用は業者やサービス内容によって幅がありますが、手続き代行を含むフルサポートプランで15〜40万円程度が目安です。複数の業者から見積もりを取り、対応範囲と費用を比較したうえで選ぶことをおすすめします。
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よくある質問
Q. 改葬許可証はどこで取得できる? ▼
現在のお墓がある市区町村の役所で取得します。窓口は「市民課」「戸籍課」など自治体によって異なりますので、事前に電話で確認しておくとスムーズです。
Q. 改葬許可の手続きにかかる費用は? ▼
改葬許可証の発行手数料は無料〜数百円程度です。自治体によって異なりますが、高くても1,000円を超えることはほぼありません。
Q. 改葬許可証の発行までどれくらいかかる? ▼
書類に不備がなければ、即日〜1週間程度で発行されます。ただし、埋葬証明書や受入証明書の取得に時間がかかる場合があるため、全体では2〜4週間を見ておくと安心です。
Q. 改葬許可の手続きは自分でできる? ▼
はい、個人でも十分に対応できます。必要書類を揃えて役所の窓口に提出するだけです。不安な場合は行政書士や墓じまい業者に代行を依頼することもできます。
Q. 遠方の役所でも手続きできる? ▼
多くの自治体では郵送での申請にも対応しています。まずは現在のお墓がある市区町村の役所に電話で確認し、郵送申請の可否と必要書類を聞いておきましょう。
最後に
墓じまいの手続きは、改葬許可証を取得するという一本の流れです。必要な書類は3〜4種類で、費用も数百円程度。書類を一つずつ準備して役所に提出すれば、それで完了します。
手続きに不安を感じたら、まずはお墓がある市区町村の役所に電話してみてください。必要書類や様式について、丁寧に教えてもらえます。自分で進めるのが難しいと感じた場合は、行政書士や墓じまい業者への相談も一つの方法です。