お彼岸は「あの世に最も近づく7日間」

お彼岸とは、春分の日・秋分の日を中日(ちゅうにち)として、その前後3日間を合わせた7日間の仏教行事です。春と秋の年2回あり、この期間にご先祖様の供養やお墓参りを行います。

「彼岸」はサンスクリット語の「パーラミター(波羅蜜多)」に由来し、「向こう岸」すなわち悟りの世界を意味します。対して私たちが生きるこの世は「此岸(しがん)」と呼ばれます。春分・秋分の日は太陽が真東から昇り真西に沈むため、西方にあるとされる極楽浄土に最も近づける日と考えられてきました。

お彼岸にお墓参りをする習慣は日本独自のもので、インドや中国の仏教にはありません。聖徳太子の時代にはすでにその原型があったとされ、現在まで1,000年以上続く行事です。

2026年のお彼岸の日程

お彼岸の日程は毎年変わります。春分の日と秋分の日は国立天文台が前年2月に官報で発表する暦象年表に基づいて決まるため、年によって1日ずれることがあります。

彼岸入り 中日 彼岸明け
春のお彼岸 3月17日(火) 3月20日(金・春分の日) 3月23日(月)
秋のお彼岸 9月20日(日) 9月23日(水・秋分の日) 9月26日(土)

7日間のうち最初の3日間を「彼岸入り」、中日を「中日(ちゅうにち)」、最後の3日間を「彼岸明け」と呼びます。お墓参りは7日間のいつ行っても構いませんが、中日に行く方が最も多い傾向があります。

春のお彼岸と秋のお彼岸の違い

春彼岸と秋彼岸は、どちらも7日間ご先祖様を供養する期間であることに変わりはありません。ただし、いくつかの違いがあります。

春のお彼岸 秋のお彼岸
中日 春分の日(3月20日頃) 秋分の日(9月23日頃)
お供え物 ぼたもち(牡丹餅) おはぎ(御萩)
花の名前の由来 牡丹(春に咲く花) 萩(秋に咲く花)
季節の特徴 寒さが和らぎ始める時期 暑さが落ち着き始める時期

ぼたもちとおはぎは基本的に同じ食べ物(もち米をあんこで包んだもの)ですが、春は牡丹の花にちなんで「ぼたもち」、秋は萩の花にちなんで「おはぎ」と呼び名が変わります。春はこしあん、秋はつぶあんで作るという説もありますが、地域によって異なります。

お彼岸のお墓参りの作法

お彼岸のお墓参りに厳密な作法はありませんが、一般的な流れを押さえておくと安心です。

持ち物を準備する

お墓参りに必要な持ち物は、お線香、ライター(マッチ)、お花、お供え物、数珠、ひしゃく、たわしやブラシ(掃除用)、ゴミ袋です。霊園によってはバケツやひしゃくが備え付けてある場合もあります。事前に確認しておくと荷物を減らせます。

お墓を掃除する

まずお墓の周りの落ち葉や雑草を取り除きます。次に、墓石に水をかけながらたわしやブラシで汚れを落とします。文字の彫り部分は歯ブラシを使うときれいになります。花立てや水鉢も洗い、きれいな水を入れ直しましょう。

お供え物を置き、お線香をあげる

掃除が終わったら花立てに花を生け、お供え物を供えます。お供え物は半紙や懐紙の上に置くのが丁寧です。お線香に火をつけ、手で仰いで炎を消してから香炉に立てます(息で吹き消すのはマナー違反とされています)。

合掌して祈る

数珠を手にかけ、墓石に向かって合掌します。しゃがんで目線を墓石より低くするのが丁寧とされています。故人への感謝や近況報告など、心の中で語りかけてください。複数人でお参りする場合は、故人と縁の深い方から順に合掌します。

後片付けをする

お参りが終わったら、食べ物のお供え物は持ち帰ります。そのままにしておくとカラスや動物に荒らされる原因になります。お花とお線香はそのまま置いて構いません。ゴミは必ず持ち帰りましょう。お墓参りの詳しい手順も参考にしてください。

お彼岸のお供え物

お彼岸のお供え物は、仏壇とお墓の両方に用意するのが一般的です。定番のお供え物と、選ぶ際のポイントをまとめました。

ぼたもち・おはぎ

お彼岸の代表的なお供え物です。小豆の赤色には邪気を払う力があると古くから信じられており、ご先祖様への供養にふさわしいとされてきました。手作りでも市販品でも構いません。

お花

お彼岸に供える花として定番なのは、菊、カーネーション、りんどう、ユリなどです。白や黄色、紫といった落ち着いた色合いのものを選ぶのが一般的ですが、故人が好きだった花があればそれを供えても問題ありません。トゲのある花(バラなど)や毒のある花は避けるのがマナーです。

その他のお供え物

果物、和菓子、お茶、お線香、ろうそくなどもお供え物として一般的です。故人が生前好んでいたものを供えるのもよいでしょう。ただし、肉や魚などの生ものは殺生を連想させるため避けます。お酒は宗派や地域によって考え方が異なるため、迷ったら菩提寺に相談してみてください。

お彼岸にやること一覧

お彼岸の7日間にやることをまとめました。すべてを行う必要はなく、できる範囲で取り組めば十分です。

やること 内容
お墓参り お墓の掃除をし、お花・お線香・お供え物を供えて合掌する
仏壇の掃除とお供え 仏壇をきれいにし、ぼたもち(おはぎ)や花を供える
お寺の彼岸法要に参加 菩提寺で行われる彼岸会(ひがんえ)に参列する
六波羅蜜の実践 布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧の六つの修行を意識して過ごす
親族との話し合い お墓の管理や今後の供養について家族で相談する

特にお墓の管理が負担になっている場合は、お彼岸の機会に親族と今後について話し合ってみてください。お墓の管理費の負担や、承継者の問題は早めに共有しておくことが大切です。

お彼岸に墓じまいはできるか

お彼岸の期間中に墓じまいの工事を行うこと自体は、法律上も宗教上も問題ありません。ただし、霊園や寺院によってはお彼岸の期間中は工事を受け付けていない場合があります。石材店や霊園の管理事務所に事前に確認してください。

むしろ、お彼岸はお墓の今後について考える良いきっかけになります。「お墓が遠くてなかなかお参りに行けない」「管理する人がいなくなりそう」という悩みがあれば、お彼岸で親族が集まるタイミングで墓じまいの相談を始めてみてはいかがでしょうか。

墓じまいを検討する際は、まず現在のお墓の管理費や今後の承継者について整理したうえで、家族全員が納得できる形を探ることが大切です。

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よくある質問

Q. お彼岸にお墓参りに行けない場合はどうすればいい?

お彼岸の期間中に必ず行かなければならないという決まりはありません。自宅で仏壇に手を合わせたり、お供え物をしたりするだけでも十分なご供養になります。時期をずらしてお墓参りに行っても問題ありません。

Q. お彼岸とお盆の違いは何?

お盆はご先祖様の霊が家に帰ってくる期間とされ、迎え火・送り火などの儀式があります。一方、お彼岸は此岸(この世)から彼岸(あの世)へ思いを寄せる期間であり、自ら修行や善行を積む意味合いが強いのが特徴です。どちらもご先祖様を供養する行事ですが、成り立ちや意味が異なります。

Q. お彼岸のお供え物に決まりはある?

厳密な決まりはありませんが、春彼岸にはぼたもち、秋彼岸にはおはぎをお供えするのが古くからの習わしです。そのほか、故人が好きだったお菓子や果物、季節の花などをお供えするのが一般的です。肉や魚など殺生を連想するものは避けるのがマナーとされています。

Q. お彼岸にやってはいけないことはある?

仏教上の明確な禁止事項はありません。ただし、地域や家庭の慣習として、お彼岸の期間中に慶事(結婚式や引っ越しなど)を避ける考え方があります。気になる場合は親族や地域の年長者に相談してみてください。

Q. お彼岸に墓じまいの相談や手続きを進めてもいい?

はい、問題ありません。お彼岸のお墓参りをきっかけに、お墓の今後について家族で話し合うケースは多くあります。親族が集まりやすい時期でもあるため、墓じまいや改葬の相談を始めるにはむしろ良いタイミングです。

まとめ

お彼岸は春分・秋分の日を中日とした7日間で、ご先祖様を供養する日本独自の仏教行事です。2026年の春彼岸は3月17日~23日、秋彼岸は9月20日~26日です。

お墓参りでは掃除をしてからお花やお線香を供え、静かに手を合わせます。お供え物は春にぼたもち、秋におはぎを用意するのが伝統的です。堅苦しく考える必要はなく、ご先祖様を思い、感謝の気持ちを伝えることが何より大切です。

お彼岸をきっかけにお墓の管理や今後の供養について考えたい方は、墓じまいの進め方もあわせてご覧ください。