自然葬は遺骨を自然に還す供養の総称

自然葬とは、墓石を建てる代わりに遺骨を自然の中に還す供養方法の総称です。特定の形式を指す言葉ではなく、樹木葬・海洋散骨・山林散骨などをまとめて呼ぶときに使われます。

言葉が広まったのは1990年代です。それまでの「お墓は家が代々守るもの」という前提が、少子化と都市部への人口集中で揺らぎ始めた時期にあたります。後を継ぐ人がいない、遠方で管理できないという事情を抱えた方にとって、墓石を持たない選択肢が現実的な意味を持つようになりました。

厚生労働省の統計では、改葬(お墓の引っ越し)の件数は年間15万件を超えています(出典 厚生労働省「衛生行政報告例」)。その受け皿として自然葬を選ぶ方が増えているのが今の流れです。

主な種類は樹木葬・海洋散骨・山林散骨の3つ

自然葬に含まれる方法は、大きく3つに分けられます。遺骨がどこへ行くか、お参りの場所が残るかどうかが分かれ目です。

種類 費用目安 お参りの場所 遺骨の取り出し
樹木葬(個別区画) 30〜80万円 区画の前 一定期間は可能
樹木葬(合祀型) 10〜30万円 シンボルツリーの前 できない
海洋散骨(代行) 2〜5万円 残らない できない
海洋散骨(乗船) 10〜30万円 残らない(海域は指定できる) できない
山林散骨 5〜20万円 霊園型なら区域内 できない

樹木葬は墓地として許可された区域で行う

樹木葬は、墓石の代わりに樹木や草花を墓標とする埋葬方法です。桜やハナミズキをシンボルツリーにした庭園型、里山の環境を活かした里山型、都市部の寺院にある小規模なものと形はさまざまです。

どの形式であっても、行われるのは墓地として都道府県知事の許可を受けた区域です。自宅の庭や所有する山林に遺骨を埋めることは、墓地埋葬法で禁じられています。

散骨は粉末にしてから撒く

散骨は、遺骨を2ミリ以下の粉末状にして自然に還す方法です。この粉骨という工程を経ることで、遺骨とは判別できない状態になります。

もっとも多いのが海洋散骨です。遺族が乗船して立ち会う形式と、業者に任せる代行形式があり、費用は大きく変わります。山林散骨は、業者が所有・管理する山林で行われます。

法律上の扱いは樹木葬と散骨で異なる

自然葬と一括りにされますが、法律上の位置づけは樹木葬と散骨で違います。

樹木葬は墓地埋葬法の枠内

樹木葬は遺骨を土に埋めるため、墓地埋葬法にいう「埋蔵」にあたります。許可を受けた墓地でしか行えず、納骨のときには改葬許可証または埋葬許可証の提出が必要です。

制度としては通常のお墓と同じ扱いになるため、手続き面での不確かさはありません。

散骨を直接定めた法律はない

散骨については、これを直接規定した法律がありません。刑法190条の遺骨遺棄罪に触れるのではないかという議論はありましたが、「葬送のための祭祀として、節度をもって行われる限り違法ではない」という法務省の見解が示されて以降、実務上は容認されています。

ただし自治体の条例で場所が制限されている地域があります。北海道長沼町や埼玉県秩父市など、区域や方法を条例で定めている例があるため、散骨する場所の自治体規則を業者に確認してもらってください。

法律面の詳細は散骨と法律のページで整理しています。

選ぶ前に確認したいのは3点

自然葬は費用を抑えやすく、後の管理も要らない方法です。そのうえで、決める前に押さえておきたい点が3つあります。

遺骨を後から取り出せるか

合祀型の樹木葬と散骨は、遺骨を後から取り出せません。合祀は他の方の遺骨と混ざり、散骨は粉末にして撒いてしまうためです。

「やはりお墓に納めたい」と後から気持ちが変わっても、戻す手立てがないという点は理解しておいてください。将来の可能性を残したいなら、一定期間は個別に安置される区画型の樹木葬を選ぶか、遺骨の一部を分骨して手元に残す方法があります。

お参りする場所が残るか

樹木葬なら、シンボルツリーや区画の前で手を合わせられます。散骨の場合は決まった場所が残りません。

手を合わせる先が欲しいという方は少なくありません。散骨を選びつつお参りの場所も持ちたい場合は、遺骨の一部を手元供養として残す、あるいは散骨した海域を望む場所を訪ねるという形が取られます。

親族が納得しているか

もっとも多いつまずきがここです。決めた本人は納得していても、兄弟や親戚から「お墓をなくすのか」と言われて話が止まる例があります。

反対の背景にあるのは、供養が途切れることへの不安であることが多いものです。樹木葬でも合同供養が定期的に行われること、施設に記録が残ることを伝えると受け止め方が変わります。決める前に話しておけば、後から蒸し返される事態も避けられます。

墓じまいから自然葬に移すときの流れ

今あるお墓を整理して自然葬に移す場合、進め方は改葬の手順に沿います。

1

親族と話し合い、受け入れ先を決める

樹木葬なら霊園、散骨なら業者を選び、見学や資料請求で内容を確かめます。

2

改葬許可を取る

樹木葬は受入証明書が要ります。散骨は墓地に納めないため扱いが自治体で異なるので、窓口に確認してください。

3

閉眼供養と遺骨の取り出し

魂抜きを行ってから、石材店が墓石を撤去します。

4

樹木葬なら納骨、散骨なら粉骨してから散骨

古い遺骨は乾燥や洗浄が必要なことがあり、粉骨前に処理されます。

散骨の場合、改葬許可の扱いが自治体で分かれます。墓地から取り出す時点で改葬許可が必要とする自治体と、散骨は墓地への納骨ではないため不要とする自治体があるためです。業者が手続きに慣れていることが多いので、相談のときに聞いてください。

全体の進め方は墓じまいの流れにまとめています。費用の見積もりは墓じまいの費用相場を参考にしてください。

全部を自然葬にしなくてもよい

複数の遺骨がある場合、すべてを同じ方法にする必要はありません。父は海が好きだったので散骨、母は花が好きだったので樹木葬、といった分け方をする家庭もあります。

一部だけを手元に残す分骨という方法もあります。全部を手放すことに迷いがあるなら、こうした組み合わせも検討してみてください。

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よくある質問

Q. 自然葬と樹木葬は同じものですか?

樹木葬は自然葬の一種です。自然葬は遺骨を自然に還す供養の総称で、樹木葬・海洋散骨・山林散骨などが含まれます。

Q. 自然葬は法律で認められていますか?

樹木葬は墓地として許可を受けた区域で行われるため、墓地埋葬法の枠内で行われています。散骨を直接定めた法律はなく、節度をもって行えば違法ではないという解釈が一般的です。

Q. 自然葬の費用はどのくらいですか?

海洋散骨の代行なら5万円前後、樹木葬は10万円から80万円、納骨堂を含めない自然葬全体では2万円から80万円と幅があります。合祀型ほど安く、個別区画ほど高くなります。

Q. 自然葬でもお墓参りはできますか?

樹木葬はシンボルツリーや区画の前で手を合わせられます。散骨は決まった場所が残らないため、船を出して海上で供養するか、遺骨の一部を手元に残す方法が取られます。

Q. 自然葬にすると遺骨は取り出せなくなりますか?

合祀型の樹木葬と散骨は、後から取り出せません。将来の可能性を残したい場合は、個別区画型の樹木葬か、遺骨の一部を分骨して手元に残す方法を検討してください。

Q. 親族に反対されたらどうすればよいですか?

「お墓がなくなる」ことへの不安が理由であることが多いものです。合同供養が定期的に行われること、記録が残ることを説明すると理解が得られやすくなります。個別区画型を選び、お参りの場所を残す折衷案もあります。

最後に

自然葬は、樹木葬・海洋散骨・山林散骨をまとめた呼び方です。費用は2万円から80万円と幅があり、合祀型ほど安く、個別区画ほど高くなります。

樹木葬は墓地として許可された区域で行われ、手続きは通常のお墓と同じです。散骨には直接の法律がなく、節度をもって行うことと自治体の条例を守ることが前提になります。

決める前に確かめたいのは、遺骨を後から取り出せるか、お参りの場所が残るか、親族が納得しているかの3点です。この3つを家族で話し合っておけば、後から迷うことは少なくなります。