卒塔婆は故人の供養のために立てる細長い木の板

卒塔婆(そとうば・そとば)とは、お墓の後ろに立てる細長い木の板のことです。「塔婆(とうば)」と略して呼ばれることも多く、どちらも同じものを指します。

語源はサンスクリット語の「ストゥーパ」で、お釈迦様の遺骨を納めた仏塔を意味します。日本に伝わる過程で五重塔などの形に変化し、それをさらに簡略化して板状にしたものが今の卒塔婆です。

板の上部が段になっているのは、五輪塔をかたどっているためです。上から順に空・風・火・水・地を表し、仏教で説く宇宙の五大要素を示しています。塔婆を立てることは、小さな仏塔を建てるのと同じ意味を持つと考えられてきました。

立てる目的は追善供養

塔婆を立てる目的は追善供養です。追善供養とは、生きている人が善い行いを重ね、その功徳を故人に向けることをいいます。塔婆を立てる行為そのものが善行にあたり、故人の冥福につながると考えられています。

同時に、供養する側にとっての区切りという意味もあります。真新しい塔婆が立つとお墓の印象が引き締まり、手を合わせる気持ちも整いやすくなります。

板に書かれている内容

塔婆の表面には、上から梵字(ぼんじ)、戒名、経文、供養する年月日、施主名などが書かれます。裏面には梵字と建立年月日が入ることが一般的です。

書かれる内容や配置は宗派によって違います。文字は寺院の僧侶が墨書きするため、申し込むときに戒名と施主名を正確に伝える必要があります。

塔婆料の相場は1本3,000円〜10,000円

塔婆を立てるときに寺院へ納めるお金を塔婆料といいます。相場は1本あたり3,000円から10,000円で、3,000円から5,000円に設定している寺院が多く見られます。

項目 相場 備考
塔婆料(1本) 3,000円〜10,000円 3,000〜5,000円の寺院が多い
経木塔婆(水塔婆) 数百円〜1,000円 薄い板の簡易な塔婆。水施餓鬼などで使う
法要のお布施(別途) 30,000円〜50,000円 塔婆料とは分けて包む

塔婆料はお布施と違い、寺院が金額を決めているのが普通です。「お気持ちで」と言われることは少なく、寺務所に聞けば1本いくらかを教えてもらえます。金額に悩む必要がない点は、他の仏事の費用と大きく違うところです。

複数本を立てる場合は本数分をまとめて納めます。三回忌で親族3人がそれぞれ立てるなら、3本分の塔婆料が必要です。

法要のお布施とは別に用意する

塔婆料と法要のお布施は性質が異なります。お布施は僧侶の読経に対する謝礼、塔婆料は塔婆という物と供養に対する対価です。同じ封筒に入れず、別々に用意してください。

お布施の考え方については墓じまいのお布施のページでも解説しています。

塔婆を立てるのは法要・お盆・お彼岸・命日

塔婆を立てる時期に決まりはありませんが、実際には次のような場面で立てられます。

  • 四十九日、一周忌、三回忌などの年忌法要
  • お盆(新盆・初盆はとくに立てることが多い)
  • 春と秋のお彼岸
  • 祥月命日(故人が亡くなった月日)
  • お墓を新しく建てたときの開眼供養
  • 施餓鬼会(せがきえ)など寺院の年中行事

もっとも多いのは年忌法要のタイミングです。三十三回忌や五十回忌といった弔い上げまで、節目ごとに立て替えていく家が多くあります。

申し込みは法要の1〜2週間前まで

塔婆は僧侶が一本ずつ手書きするため、当日に頼んでも間に合いません。法要の1週間から2週間前までには寺院に申し込んでください。お盆やお彼岸は依頼が集中するので、さらに早めに連絡しておくと確実です。

申し込みのときに伝えるのは、故人の戒名(俗名で供養する場合は俗名)、施主の氏名、立てる本数、法要の日付の4点です。戒名は位牌や過去帳で確認できます。

塔婆料は白い封筒に入れ、表書きは「塔婆料」

塔婆料は現金をそのまま渡さず、封筒に入れて納めます。使う封筒と書き方には一定の型があります。

封筒の選び方

白無地の封筒を使うのが基本です。郵便番号欄が印刷されていないものを選んでください。市販の白封筒で構いません。

不祝儀袋を使う場合は、黒白または双銀の水引がついたものにします。ただし塔婆料は弔事の香典とは性質が違うため、白封筒のほうが無難です。地域によっては黄白の水引を使う習慣もあるため、迷ったら寺院や年長の親族に確認してください。

表書きと中身の書き方

場所 書く内容
表面の上段 「塔婆料」または「御塔婆料」
表面の下段 施主の氏名(フルネーム)
裏面 金額と住所。金額は「金五千円」のように旧字体で書く
中のお札 新札でも旧札でも構わない。向きをそろえて入れる

墨は濃墨を使います。香典で用いる薄墨は「涙で墨が薄まった」という意味を持つため、塔婆料には使いません。

渡すタイミングは法要の当日、寺院に着いてすぐが一般的です。法要のお布施と一緒に、それぞれ別の封筒として渡します。

古い塔婆は寺院にお焚き上げしてもらう

塔婆は木の板なので、屋外に立てておくと数年で傷みます。文字がかすれ、板が反ったり割れたりしてきたら処分の時期です。

処分は寺院や霊園に任せるのが基本です。墓地には古い塔婆を集める場所が設けられていることが多く、そこに置いておけばお焚き上げしてもらえます。場所がわからなければ管理事務所に聞いてください。

立てておく期間の目安

期間に決まりはありません。次の法要で新しい塔婆を立てるまで、というのが自然な考え方です。年忌法要ごとに立て替えるなら、数年ごとに入れ替わっていきます。

お盆やお彼岸に毎年立てる場合は、本数が増えて墓域が塔婆で埋まってしまうことがあります。寺院によって「立てておくのは3年まで」といった目安を設けているところもあるため、確認しておくと管理が楽になります。

自分で処分するのは避ける

塔婆は木材なので、自治体のルール上は可燃ごみとして出せる地域もあります。ただ、供養の対象だったものをごみとして出すことに抵抗を感じる方は多く、親族の目に触れれば気まずくもなります。費用がかかるものでもないため、寺院に任せるほうが無難です。

どうしても自分で処分する場合は、塩で清めてから白い紙に包み、自治体の分別に従って出す方法が取られます。

浄土真宗では塔婆を立てない

浄土真宗では原則として塔婆を立てません。理由は教義にあります。

浄土真宗は、亡くなった方は阿弥陀如来の力によってすぐに極楽浄土へ往生するという教えです。すでに仏になっている以上、後から善行を積んで冥福を祈る追善供養という考え方をとりません。塔婆供養は追善供養にあたるため、行わないことになります。

ただし地域や寺院によっては、慣習として塔婆に近いものを扱う例もあります。浄土真宗の檀家で塔婆について迷ったら、菩提寺に直接たずねてください。

宗派 塔婆の扱い
真言宗・天台宗 立てる。梵字を重視した書き方をする
曹洞宗・臨済宗 立てる。年忌法要ごとの建立が一般的
浄土宗 立てる
日蓮宗 立てる。題目を書くのが特徴
浄土真宗 原則として立てない

浄土真宗の供養の考え方は、浄土真宗の永代供養のページでも触れています。

墓じまいのときは塔婆も一緒にお焚き上げする

墓じまいをする場合、墓域に立っている塔婆も片づけます。閉眼供養を依頼する僧侶に、塔婆のお焚き上げも合わせて相談するのが一般的な進め方です。

撤去工事の見積もりに、塔婆立ての解体や塔婆の処分が含まれていることもあります。何がどこまで含まれているかは業者によって違うため、見積書の内訳を確認してください。墓じまいの費用のページに、内訳の見方をまとめています。

墓じまいのあとは、新しい供養先によって塔婆の扱いが変わります。永代供養納骨堂では塔婆を立てる場所がないことが多く、樹木葬も同様です。塔婆供養を続けたい場合は、受け入れ先に対応の可否をたずねておいてください。

お墓の基礎知識に関する記事一覧

お墓と供養の基本について、テーマごとにまとめています。

よくある質問

Q. 卒塔婆と塔婆は違うものですか?

同じものを指します。正式名称が「卒塔婆(そとうば・そとば)」で、「塔婆(とうば)」は略した呼び方です。お寺や地域によってどちらの言い方も使われます。

Q. 塔婆料はいくら包めばよいですか?

1本あたり3,000円から10,000円が目安で、3,000円から5,000円に設定している寺院が多く見られます。金額は寺院が決めているため、申し込むときに確認できます。

Q. 塔婆は必ず立てなければいけませんか?

立てる義務はありません。追善供養のための任意の習慣です。ただし、法要の場で施主だけが立てないと目立つこともあるため、親族と足並みをそろえておくと後々気まずくなりません。

Q. 浄土真宗でも塔婆を立てますか?

原則として立てません。浄土真宗は亡くなるとすぐに極楽浄土に往生するという教えのため、追善供養にあたる塔婆供養を行わないからです。ただし一部の地域や寺院では慣習として扱う例もあります。

Q. 古くなった塔婆はどうすればよいですか?

寺院や霊園がお焚き上げをしてくれます。墓地の指定場所に置くか、管理事務所に渡してください。自分で処分するのは避けたほうが無難です。

Q. 塔婆料は誰が払いますか?

塔婆を申し込んだ人が払います。法要では施主がまとめて立てることもあれば、参列する親族がそれぞれ自分の分を申し込むこともあります。

Q. 墓じまいをするとき、塔婆はどうなりますか?

墓地に残っている塔婆は、閉眼供養のときに寺院へお焚き上げを依頼します。撤去工事の見積もりに含まれている場合もあるため、石材店にも確認してください。

最後に

卒塔婆は、故人の供養のために立てる木の板です。塔婆料は1本3,000円から10,000円で、寺院が金額を決めているため、いくら包むか悩む必要はありません。

立てるかどうかは任意です。法要のたびに立てる家もあれば、節目だけにする家もあります。親族の考え方をそろえておけば、後から気にかかることもなくなります。

古くなった塔婆は寺院にお焚き上げを頼んでください。墓じまいを考えている場合は、閉眼供養のときに合わせて相談すると手間が減ります。