分骨は遺骨を分けて別々の場所で供養すること

分骨とは、故人の遺骨を2か所以上に分けて、それぞれ別の場所で供養することをいいます。

実際に選ばれる理由はさまざまです。

  • 先祖代々の墓が遠方にあり、手元にも一部を置いておきたい
  • 兄弟がそれぞれの住まいの近くで供養したい
  • 宗派の総本山に納骨したい(本山納骨)
  • 一部を海に散骨し、残りはお墓に納めたい
  • 遺骨の一部をペンダントや小さな骨壺で手元に置きたい

古くから行われてきた習慣でもあります。浄土真宗では西本願寺や東本願寺に、真言宗では高野山に遺骨の一部を納める本山納骨が続いており、分骨は珍しいことではありません。

法律上も宗教上も問題はない

分骨は法律で認められています。墓地埋葬法の施行規則が分骨の手続きを定めており、証明書を受けたうえで正規に行えます。無許可で行うことにはなりません。

「遺骨を分けると魂が分かれてしまう」という言い方を聞くことがありますが、仏教でそのように説かれているわけではありません。仏教では、お釈迦様の遺骨が各地の仏塔に分けて納められたとされており、むしろ分骨は自然な行為として受け止められてきました。

気にする親族がいる場合は、この点を説明すると理解が得られやすくなります。

必要なのは分骨証明書1枚

分骨の手続きで必要になるのは分骨証明書です。分けた遺骨が正規の手続きを経たものであることを示す書類で、新しい納骨先に提出します。

どこで発行されるかは、分けるタイミングによって変わります。

分けるタイミング 発行してもらう先 手数料の目安
火葬のとき 火葬場(火葬許可証を出した自治体の窓口の場合も) 無料〜数百円
お墓に納めた後 墓地・霊園の管理者 無料〜数百円

証明書は分けた数だけ必要です。3か所に分けるなら2通(元の1か所を除く)を用意します。発行を頼むときに「何通必要か」を伝えてください。

手元供養だけなら証明書は要らない

遺骨の一部を自宅に置くだけであれば、提出先がないため証明書は必要ありません。ペンダントや小さな骨壺に納めて手元に置く分には、手続きなしで行えます。

ただし、将来その遺骨をお墓や納骨堂に納める可能性があるなら、そのときに証明書が要ります。後から取り直すのは手間なので、分骨の時点でもらっておくほうが確実です。数百円の話で、持っていて困るものではありません。

書類の種類については埋葬許可証のページでも整理しています。

火葬のときに分けるほうが手間も費用も少ない

分骨するタイミングは、火葬の直後とお墓に納めた後の2つです。手間で言えば、火葬のときに分けておくほうが圧倒的に楽になります。

火葬のときに分ける手順

1

葬儀社に分骨したいと伝える

分骨用の骨壺を人数分手配してもらいます。数千円程度です。

2

火葬場に分骨証明書を依頼する

当日に発行してもらえます。必要な通数を伝えてください。

3

収骨のときに分けて納める

係の方が案内してくれるため、遺族が判断に迷うことはありません。

この流れなら、追加でかかるのは骨壺代だけです。石材店を呼ぶ必要も、供養をやり直す必要もありません。

納骨した後に分ける手順

すでにお墓に納めてある遺骨を分ける場合、手順が増えます。

1

墓地の管理者に連絡する

分骨したい旨を伝え、分骨証明書の発行を依頼します。

2

石材店にカロートを開けてもらう

墓石を動かす作業が要るため、自分では行えません。

3

閉眼供養と開眼供養を行う

お墓を開ける前に閉眼供養、戻した後に開眼供養を行うのが通例です。省略する寺院もあります。

4

遺骨を取り出して分ける

長く納められていた遺骨は湿っていることがあり、乾燥が必要になる場合があります。

閉眼供養開眼供養を行う場合、それぞれお布施が必要です。石材店の作業費と合わせると、数万円から十数万円になります。

費用は火葬時なら数千円、納骨後なら数万円

費用項目 相場 かかる場面
分骨用の骨壺 3,000円〜1万円 どちらの場合も必要
分骨証明書 無料〜数百円 どちらの場合も必要
石材店の作業費 2万円〜5万円 納骨後に分ける場合
閉眼供養・開眼供養のお布施 3万円〜10万円 納骨後に分ける場合。省略する寺院もある
粉骨(散骨する場合) 1万円〜3万円 散骨に回す分がある場合
新しい納骨先の費用 3万円〜 本山納骨・永代供養墓などに納める場合

差が出るのはタイミングです。火葬時なら骨壺代だけで済むのに対し、納骨後は石材店と寺院が絡むため十万円前後になることもあります。分骨する可能性が少しでもあるなら、火葬のときに決めておくほうが負担は軽くなります。

気をつけたいのは親族の同意と、戻せない選択

先に話しておく

分骨に親族の同意は法律上の要件ではありません。ただ、後から知った親族との間でもめる例は実際にあります。

とくにお墓の名義人(祭祀承継者)以外が主導する場合は注意が必要です。墓地の管理者も、名義人の承諾なしにはカロートを開けさせないのが普通です。手続きの面からも、先に話を通しておくほうが早く進みます。

合祀や散骨に回した分は戻らない

分けた遺骨を後から一つにまとめられるかどうかは、納め方によります。個別に安置されていれば取り出して合わせられますが、合祀された分や散骨した分は戻せません。

「とりあえず一部を合祀墓に」と決める前に、将来まとめ直す可能性がないかを考えてみてください。

手元供養の遺骨は行き先を決めておく

自宅に置いた遺骨は、置いている本人が亡くなったときに扱いに困ることがあります。誰がどこに納めるのかを決めていないと、残された家族が判断できません。

エンディングノートに書いておく、あらかじめ受け入れ先を決めておくといった備えをしておくと、次の世代が迷わずに済みます。

墓じまいのときは分骨と組み合わせる方法もある

墓じまいを進めるとき、遺骨をすべて同じ場所に移す必要はありません。分骨を組み合わせることで、家族それぞれの希望を通せる場合があります。

たとえば、大半は永代供養墓に納めつつ、一部を手元に残す。あるいは一部を海に散骨し、残りは樹木葬にする。こうした分け方をすれば、「全部を手放すのは寂しい」という気持ちと、「管理の負担をなくしたい」という事情の両方に折り合いがつきます。

複数の遺骨がある場合は、遺骨ごとに行き先を分けるという考え方もあります。墓じまい後の遺骨のページで、選択肢を整理しています。

墓じまいの手続きの中で分骨する場合、改葬許可証と分骨証明書の両方が必要になることがあります。市区町村の窓口と墓地の管理者の双方に、分骨する予定を伝えておいてください。手続きは改葬の手続きにまとめています。

お墓の基礎知識に関する記事一覧

遺骨の扱いと供養の基本について、テーマごとにまとめています。

よくある質問

Q. 分骨は法律で認められていますか?

認められています。墓地埋葬法施行規則に分骨の手続きが定められており、証明書を受けて正規に行えます。「魂が分かれる」といった宗教的な問題も、仏教では特に説かれていません。

Q. 分骨証明書はどこでもらえますか?

火葬のときに分ける場合は火葬場、すでにお墓に納めた遺骨を分ける場合は墓地の管理者が発行します。手数料は無料から数百円程度です。

Q. 分骨証明書がないとどうなりますか?

新しい納骨先が遺骨を受け入れられません。正規の手続きを経た遺骨であることを示す書類のため、納骨する予定があるなら必ず取得してください。手元供養だけなら提出先はありません。

Q. 分骨した遺骨を後で一つに戻せますか?

戻せる場合と戻せない場合があります。個別に安置されていれば取り出して合わせられますが、合祀された遺骨や散骨した分は戻せません。

Q. 分骨に親族の同意は要りますか?

法律上の要件ではありませんが、事後に知られてもめる例は少なくありません。とくに祭祀承継者以外が主導する場合は、先に話しておくことをおすすめします。

Q. 分骨の費用はいくらですか?

火葬時なら骨壺代の数千円程度です。お墓から取り出す場合は、石材店の作業費として2万円から5万円、閉眼供養と開眼供養を行うならお布施が別途かかります。

Q. 本山納骨とは何ですか?

宗派の総本山に遺骨の一部を納めることです。浄土真宗の西本願寺や東本願寺、真言宗の高野山などで受け入れており、古くから行われてきた分骨の形です。

最後に

分骨は法律で認められた方法で、必要なのは分骨証明書1枚です。火葬のときは火葬場、納骨後は墓地の管理者が発行してくれます。

費用に大きな差が出るのはタイミングです。火葬のときなら骨壺代の数千円で済むのに対し、お墓に納めた後では石材店と寺院が絡み、十万円前後になることもあります。

合祀や散骨に回した分は元に戻せません。親族に先に話しておくことと、手元に残す遺骨の行き先を決めておくこと。この2つを押さえておけば、後から困ることはなくなります。